アウトレイジ

監督:北野 武
脚本:北野 武
制作:森 昌行、吉田 喜多男
 
2010/日本/109分
 
あらすじ
 広域暴力団内部における権力闘争と、その闘いの終わりなき無常な悲劇を描く、北野監督自身7年ぶりとなるバイオレンス作品。
 山王会池本組系・大友率いる大友組は、常に自分の親分格に当たる池本のために汚れ仕事を最前線で引き受けてきた。それが上層部の気まぐれや、単なる権力維持の為のマッチポンプであったとしても。
池本との兄弟筋に当たる村瀬と大友の偶然とも言える接触から抗争へと発展し、収拾のつかない血みどろの戦争の中で最後に誰が笑うのか。
 
レビュー
 やってくれましたね、久しぶりに。
元々その作風に対して好き嫌いの評価が著しく分かれるであろう同監督の作品であるが、今作は特にその傾向が強いかもしれない。
あらすじにもあるように、今回は監督が意図的に暴力表現を中心に描いている。作品そのものよりもその背景に興味がわくとすれば、それは彼自身のファンであるとも言えるかもしれない。
何本か映画を撮ってお金を使い切ったら、客が入る(かもしれない)映画を撮るという彼のサイクルで言うと、まさに後者に類し、本人もそう公言してはばからない。
その彼が今回表現の方法論として選んだ「バイオレンス」は、数年間のアイデアの蓄積によるという。
確かにその表現の一つ一つは「ひと工夫」効いたものが多く、見ているものに「痛さ」を伝わらせるに充分である。
かねてより「暴力は痛いものとして表現しなきゃいけない。」と言う彼の意向に沿っている。根源にあるのは「お笑い(だけ)のビートたけし」としての世間の評価を変えたかった所に起因するといい、それが象徴的だったのはその昔主演した「戦場のメリークリスマス」をこっそりと劇場最後列で見た時の光景だそうだ。「劇場で客の反応を見てるとですね、私が出るたびにみんな笑うんですよ。笑わせるシーンでもないのに。これはちょっとみんなの評価を変えないといけないな、と思いましたね」
のちに「その男凶暴につき」で自らのイメージを変える事に成功した彼の目論見は成功すると同時に、方法論と化す。
今回も北野監督らしくストーリーとしての整合性や一貫性ではなく、「いたるところに暴力がちりばめられているだけ」といった印象である。そこには感傷や感動、表現されるべき大きなテーマもない。逆説的に言うと、「暴力なんてものは心を盛り上げるための道具ではなく、淡々と転がっているもの」とのメッセージが込められているともとれる。
 
彼の作り出す空気感を好きになれるかどうか、だけとも言えるかもしれない。
他に雑多な感想も。
今回は「北野映画のレギュラー(大杉漣寺島進?etc....)は使わないで欲しい」との映画会社からの要求もあり、出演するのは彼の映画に初めて登場する面々である。
正直、名前を聞いただけなら「え~、この人がヤクザ???」といった第一印象のキャストもフタを開ければプロの仕事をしている。特に刑事役の小日向文世は抜群であるw
北野監督自身は三浦友和を絶賛していたが、映画を観ていて感じるのはむしろ「椎名桔平をかなり気に入ったんじゃないか?w」というのと加瀬亮がハマりすぎなところ。あと、中野英雄が素晴らしく「らしさ」を全開にしておりますwww
また、以前までの北野監督はお笑い出身で言葉の世界に生きる人間ゆえの反作用か「語らずとも分かるだろう」との世界観に固執してきたが、今回は沢山しゃべる。それは本人も意識してるようで、「分かりやすく伝えようと思った」からだそうだ。ゆえに、彼の作品を何作か観た人間なら前半でのヤカり合い等には違和感を覚えるかもしれない。
そんな感じですかね。
個人的には次はエンタメ作品が来るかも・・・、と思ってる。
頭を使ったシナリオでね。
 
採点:☆☆☆★★
映画は観たいけど、特に希望する作品がなければどうぞ・・・、って6月上旬公開なんですねw
 
最後に、長文ついでにw
この映画の本当のハイライトは個人的に別のところに見つけました。
それは映画のプロモーション番組での一場面です。
久本雅美とオードリーの二人が番組の最後に北野監督本人に聞きたい事を尋ねるコーナーでのこと。
久本は「私を出していただけませんか?」というありきたりなものだったが、春日が意外にいいフリをしていた。確か「最近の若手のお笑いも見るか?」だったと思う。どうやらたけしはやっぱり若手も相当観ているようで、オードリーの二人のネタも知っているし高く評価していた。その事に感動する二人はいつもどおりなんだけど、もう一つ言っていたのが「若手で一番注目しているのはブラックマヨネーズ。出演者の多い番組でヒナ段とかに居ても存在感のある仕事をする」と、高く買っていた。また、「M-1とかは緊張しちゃって観てられない」のだそうだw
そして、若林も絶品だった。質問というより「僕は・・・、もう一体どうしたらいいんでしょう?!」と悲鳴にも似た人生相談のようであったwww
それに対してもマジメに答えるたけしが言うには「オイラの時も漫才ブームとかあって、ワーっ売れたんだけどその時にこのままここにいちゃいけないな、っていうのは思ってた。実際にあの時代に一緒に漫才で売れた連中はどんどん居なくなっていったから。そこであえて漫才から離れて、冠番組持ったりとか違う形でバラエティに取り組んでいくようになった」とのこと。これには若林も目からウロコだったようで、「やっぱり別の方向へシフトしていったほうがいいんでしょうか・・・!」と感心しきりであったw
俺も相談したいよwwwww
そんな感じですw
 
あ~、長文。
大好きな人について語るのはかくも恐ろしいw