キャピタリズム〜マネーは踊る〜

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キャピタリズム〜マネーは踊る〜



2009/米国/120分

あらすじ
2008年に起こったサブプライムローン破綻に端を発する金融危機。それに巻き込まれる事になった多くのアメリカ国民を、その生活を通じて伝える。個々人の話に始まり、あらゆる視点を通して問題の本質に迫る。
アメリカに広がる貧富の格差がより如実に現れる事になった一連の金融危機。その問題はリーマンブラザーズだけにあったのか、ローンを払えない低所得者にあるのか。政治の流れとリンクさせ、アメリカ人の価値観とも絡めて少しずつ話は核心へ。いつになく、批判だけでなく「じゃあどうすればいいのか」といった回答、提言にも似たメッセージも込められたマイケル・ムーア監督の意欲作。

レビュー
一昨年秋、「全ての経済はバブルに通じる」という本のレビューを書き、ぐりタンに贈ったわけなんだけど、ある意味それの「もっと楽しい答え合わせ」といったところ。そう、今回の問題も人間が引き起こした問題。答えはあるのだ。
話はおもに困窮する低所得者層と政財界、識者をそれぞれにクロスさせながら進行。
朝日新聞をはじめとする日本のマスコミであれば、生活困窮者の映像を、家が差し押さえられる現場をお涙頂戴の映像として流して終わりだろう。しかし、マイケル・ムーアは違った。
そういった数多の悲劇が全米で起こっている事をそれだけに終わらせず、当時の政府の動きと財界の長きに渡る策動とともにつづる。そう、知れば知るほど「こうなる事は分かっていた」のだ。
レーガン大統領にまで遡るこの策動は21世紀を迎えて結実したとも言える。「他人の金でバクチを打って、国に保障させる」という冗談のような話は現実となったのだから。
そんな頭のいい人間(≒悪い人間)達がいかなる青写真を描いたのか、当のウォールストリートの中枢に居た人間にも話を聞きにいっている。以前、この日記の枕言葉で「デリバティブの説明ができますか?」と問うた事があるのを覚えている人がいるだろうか。まさにその質問をぶつけたのだが、その説明を聞いてる時のマイケル・ムーアの表情はある意味でハイライトwww
要するに、一連の経済破綻に至る錬金術は学の無い人間には追求しようがないように、上手にできているのだ。なるほど、一般人レベルの知識では「不況っぽい」くらいの事しか分からないはずだ。
今回の映画で特に注目に値するのは「マイケル・ムーアなりの答え」にも似たメッセージが込められている点。
今まではわりと問題点を指摘する事はあっても「かくあるべき」とか「これはいいパターン」といった表現はなかった。しかし、今作では「こうあるべきで、そこへ行くにはこうすればいい」とも言えるメッセージをはっきりと込めている。
それは、作中でも取り上げられる言葉、対立概念である「資本主義(キャピタリズム)と社会主義」といった安易な二元論から脱していると言っていい。
「ボロ儲けの罠」は巧妙に作られている。「誰でも頑張れば大金持ちになれる」という夢から醒めて初めてその事に気付く。
さて、人類の取るべき未来やいかに?

採点:☆☆☆☆★
時間を作ってでも観に行って下さい。そして、「甘い汁」に負けない強い人生を見つけて下さい。宮崎駿で言えば「もののけ姫」に当たる作品かもしれません。